時々行きたくなる蕎麦屋がある、下町の商店街の中にある。僕が生まれる前だから、戦後まもなく開店したんだろう。福久助という看板は変わらない、代替わりして今は二代目ご夫婦だ。
職人さんがもうひとり、先代のおばあちゃんの頃からお世話になっているわけで、最初は母に連れられいったんだと思うが、不思議と一人で徒歩で行った記憶が残る。当時から蕎麦は長く、もり蕎麦はうまくつゆにつけられないためにおかみさんはハサミで子供の僕でも食べられるサイズに切ってくれる。
ここに来ると不思議と子供の頃に帰る。今日はカツ丼とたぬきのセットだ。美味しかった。何故か母は、自分が先に食べ終わるとお会計を済ませてまだ食べている僕を置いて先に店を出る。だからいつも一人でご馳走さまといい、帰る。一人で来た思い出はそいうわけだ。
お会計を済ませて店を出る。この街特有の風景が目に入る。日曜日はひとに行き来が多いな。アーケードのなくなった商店街は余計にシャッターが目立つ。空は曇り空だが、やや明るく感じた。今日はやはり、もり蕎麦にしとけばよかったかな、と少し後悔をした。梅雨空を見上げてはお別れを感じている。