澄んだ冬空の日を 井上富雄Live@Tokyo

NOAH VOICE - 浅草六区SHOW -

朝からの冷たい雨も上がり、時折日差しもさしてきた。

井上富雄ニューアルバム、「Diamond Planet」発売記念のワンマンライブは、開演時のオーディエンスの静かな熱気からも伝わって来た。会場のジェミニシアターは、元々は、小劇場というだけあり、ひな壇式の座席は、何処からでもステージが観やすい。

この日は、いつものLIVEハウスの雰囲気とは、違っていた。前から順に席が埋まっていった。自由席の良いコンサートは、前列から座る。50sのJAZZが流れる中、会場アナウンスが入る頃には、既に満席。立錐の余地もないとは、この事だ。そして、「ダイアモンドプラネット・インスト」が、静かに流れる中、バンドが登場。何処か余裕さえ感じる井上富雄は、いつものようにベースを構え、いよいよショーが始まる。

さて、スタートは?なんと意表をついたナンバーは、新しいアルバムから、「夜更けのサイレン」こう来たのか、こちらが驚くまもなく、お馴染みのナンバーが、

今夜のセットリストは、ニューアルバム中心ではあるが、「After The Dawn」「遠ざかる我が家」更には「Barrier Gates」のレアなシングルからも、さながらBest Of Tommyな選曲となりました。中盤のアコギセットでは、敢えて井上富雄ひとりの弾き語りスタイルで2曲。

名曲、「虹のかけら」を聴くと、改めてソングライターとしての井上富雄の懐の深さを感じる。ギターを抱えた其の姿はいつかのBob Dylanを彷彿させるようだ。

アコースティックソロセットでギターのみアルバム曲を歌う

 

ショーの後半は、SE「バルカン半島」「夜間飛行」インスト曲「スーパーボール」からスタート、聴き馴染みのあるナンバーにオーディエンスも肩を揺らせながら、この夜のバンドの奏でるグルーヴに身を委ねていた。

こうして、ステージを眺めてみると、あきらかに弾き語りの時とも、バンドのベーシストの時とも違う、バンドリーダーであり、かつシンガー井上富雄がそこにいる。ベースを弾きながらの姿はある日のポールマッカートニーで、ある日のスティングで、また、ある日のリックダンコのように、

そのシーンにぴたりと収まってしまっている。我が国では、唯一無二だ。

気がついたらショーはラスト。「シーラカンスの憂鬱」からの「Diamond Planet」この日の間違いなくクライマックス。短いMCでラストを告げると、オーディエンスから、「えー、早いよ!」との声が。

それくらいに終始演奏に緊張感があり、緩いリズムとメリハリのあるMCに、気がついたらもう終わり

ミラーポールに照らされながら、エンディングと同時に怒涛のアンコール、バンドを呼ぶ拍手に応えるように、「甘い夜風に誘われて」 barrier gatesバージョン。ここで、お馴染みのトミオバンド猛者の紹介と共にソロ。この日は、ヒデローのパーカッションがバンドのグルーヴを増し、同じくゲストプレイヤーのSAX田中邦和が良いところでゴキゲンなフレーズを奏でれば、プロフェッサー金藤の鋭い眼差しが井上富雄へ注がれる。時に曲により、スネアやシンバルを変えるくらいリズムにこだわる、お馴染みの「田中徹」の安定したドラムがバンドを支える。

そして、このバンドにやはり欠かせない存在、ギター「尾上サトシ」。Katzeのそれとも違い、Tulipのそれともやはり違う、このバンドならではの世界観を一本のギターで表現する数少ない名プレイヤーである。

あっという間にショーもラスト。「遠ざかる我が家」これは事前にリハでも伺っていたので、回るミラーボールを眺めながら「ああ、無事にここに着地できたんだ」とまるで自分が井上富雄の気持ちになったかのような安堵感とともにこの日のライヴの大成功を客席にいたすべてのオーディエンスの満足げな笑顔を見て実感した。

ラストに来て改めて記しておきたいことがある。これだけの演奏を奏でたバンドメンバーはもちろん、機材搬入からセッティングに至るまで黙々と動くスタッフ、今日の客入りや天候を心配しつつ、着々と物販を準備をするスタッフ、PA,照明、本当にたくさんの人が関わり、こんな素晴らしいショーが完成したのだ。

言い換えればそれは「井上富雄」という一人の人間の魅力に他ならないわけで、彼を「大好きな人たち」がそこに集っていたわけだ。

そして、もう一つ。これは「シンガー井上富雄」のヴォーカルのレベルがグンと上がった瞬間があった。間違いなくそれは中盤から後半にかけてこれが俄然前に出てくる。そのベーステクニックや演奏センスを評価する声はもちろん多いが、僕はこの日の井上の一番はその歌唱力にあったと思う。

特に「Lets go to the・・・・」は彼だけにしか歌えないナンバーであることがこの日証明された。

気がつけば2時間19曲実に素晴らしい、メリハリのあるセットリストだった。この日終演後のアナウンスによればすでに次のツアーが春からあるようだ。シーラカンスは今度は西へ向かうらしい。今度は、バンドであるいわソロでいろんなダイアモンドプラネットを僕らの聴かせてくれるんだろう。

是非、あなたの街に立ち寄ったら会いに行ってあげて欲しい、素敵な歌と素敵な仲間たちが極上の作品とライヴを抱えてあなたを迎えてくれることでしょう。そして、井上富雄の今の歌に触れてみてください。何か新しい明日がきっと見つかるでしょう。

2024・1・21 ジェミニーシアターにて

NOAH

 

 

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