八月六日。今日という日を改めて感じながら、何というか日本人として今生きている事を考えさせられる想いだ。朝からSpotify番組収録を終えて僕らは慌ただしく出発をした。何だか今日はいい出会いになりそうでワクワクしている。
久しぶりの小田急の中で、予習もせずに今日の歌姫が語るステージを色々想像してみた。佐野元春や、浜田省吾のコーラスとしては何度もステージは観ている。ソロシンガーとしていったいどんなだろう?
ステージに置かれたピアノとマイク、キャロルキング、ローラニーロ、ジョニミッチェル、、、70年代の女性シンガーソングライターを予想してみた。しかし、一曲目がはじまると見事に僕の予想は裏切られたというか、外れた。
竹内宏美 vo,of /長田進 vo,g what’s next 今夜は間違いなく、特別になりそうだ。
歌い出した彼女の歌達はまるで今まで小さな水槽を泳いでいた魚が大海へ泳ぎ出したように、勢いよく泳ぎ出したり、時には水面に顔を出して息継ぎをしながらさらに深い海の中へと沈む。歌がまるで生きている魚のように生き生きと泳いでいる。そして、ソウルフル。
アルバム、LIFEからのナンバーを中心に組まれたファーストステージはあっというまに終わった。それはアーティストの圧倒的な存在感とそこに居た観客とだけが作り上げる世界そのもの、合間に歌われた洋楽カヴァーをも、オリジナリティを感じさせる。
そのどれもが、竹内宏美のワールドにほかならない。短いインターバルにふと考えてみた、事前にアルバムも聞いていないという失礼なスタンスにもかかわらず、僕はこんなにも集中してステージに聴き入ったのもひさしぶりなんじゃないかなと。
言葉一つ一つを大切に、歌をメロディを丁寧に歌う。こんなシンガーがまだ日本にはいたんだ、、、
そして、この日のもう一人の主人公、長田進。4本のギターから奏られるギターの数々はまるで鮮やかな色たちで塗られる一枚の絵画を描いているような音の世界、まさにこの人でしか出せないギターなんです。この日も竹内宏美の歌とピアノに上手く寄り添う、引き立たせながらも自由に描く世界。やはり、凄いギタリスト。
それは、下北で聴いた奈々子さんの時とも、武道館で観た省吾さんの時とも明らかに違うギター、まさにこの夜だけに、今、此処なステージ。
この日、機嫌がよかったのか二曲歌ってくれました。どちらも70年代の名曲を長田進版で堂々と聴かせてくれた、この日のオーディエンスから思わずため息がもれた瞬間でもあった。
ステージでの短いMCと共に歌われた、光。この日、歌われるべきこの歌が今のこの大変な世の中に必要な気がした。
あっという間のアンコールを含めた二時間のステージ。こんな素敵な時間が、そこにはある。それは配信ではえられない生の世界。
終演後、ファンの皆さんへ丁寧にご挨拶したり、気さくにサインに応じるなどその人柄の素晴らしさも含めて、これからも多くの、新しいファンに愛されることだろう。9月からは、二人とも長い浜田省吾のツアーが始まる。旅が終わったらきっと新しい作品をまた聞かせてくれるだろう。期待していいと思う。
終演後、町田の町を後にした。僕らはしばらく無言でこの日の宴の余韻を楽しんでいた。自分へのお土産で手に入れたアルバム、LIFE。きっと夏が来るたびにこの歌たちを思い出すだろう。このアルバムを大切の聞くだろう。
2022年夏、日本のシンガーソングライターの未来、竹内宏美。風のワルツが聴こえた。